デベロッパー、管理会社主導の大規模修繕
この問題、既にクローズアップ現代+(2017年10月19日放送)でも取り上げられています。
ここで非常に気になるのは、大規模修繕は「設計コンサル」によって計画策定され、工事が主導されるのが一般的であるとして番組構成されていることです。
大規模修繕は長期修繕計画に基づき実行されます。国土交通省平成25年度マンション総合調査によると、長期修繕計画がある管理組合のうち、設計事務所に外部委託して作成したケースは全体の僅か7.1%に過ぎず、デベロッパーおよび管理会社が作成した管理組合は77.9%と圧倒的多数なのです。
つまり、大規模修繕はデベロッパー、管理会社の手中にあると言って過言ではないのです。
朝日新聞の記事に立ち戻ると、住宅問題に詳しい吉岡和弘弁護士は「問題は設計コンサルだけではなく、マンションの管理会社でも知り合いの工事業者を使って高く見積もるケースがある」と述べています。
なぜ管理会社は問題化しない?
マンションデベロッパーはその傘下に管理会社、そして数多くの工事業者を抱えて仕事を回しています。バックマージンという不正発覚しやすい形ではなく、もっと巧妙にお金が上納されていく高度なシステムが構築されているのです。また、区分所有者もそのマンションのブランド力、技術力、企業価値を信頼、納得した上の購入なので、管理会社が多少割高な工事金額を提示したところで、将来にわたる保証や安心と天秤にかけると、仕方がない、むしろ当然と受け止めているようです。
つまり、大規模修繕は安ければ全て良しという訳でもないのです。マンション管理組合の運営は合意形成に非常に時間と労力を費やします。大規模タワーマンションは想像を絶する苦労の連続だと思います。価格以上に、多くの住民(=管理組合員)の納得が得られる形で工事が無事完了すること。それが大規模修繕で一番大切なことではないでしょうか。
最後に、見出しで”1戸当たりの工事費75~100万円が最多”と報じています。この数字が「相場」として一人歩きすることに危惧しています。マンション大規模修繕はその戸数、規模、立地条件、劣化状況、仕上材などでかなり違ってくるもので、十把一絡げではないのです。